賃貸物件の又貸しとは?起こり得るトラブルや入居者への対応を解説
賃貸物件を経営するうえで注意しなければいけないことのひとつが、入居者による又貸しです。
又貸しは契約違反であるだけでなく、他のトラブルを引き起こす原因ともなるため、見逃せません。
そこで今回は、賃貸物件の又貸しとはなにか、起こり得るトラブルや入居者への対応について解説します。
賃貸物件の又貸しとは?
賃貸物件の又貸しとは、入居者が貸主に無断で第三者に部屋を貸すことを指します。
貸主と入居者は賃貸借契約を結んでおり、多くの場合、賃貸借契約書には無断転貸禁止の旨が記載されています。
賃貸借契約書で禁止されているにもかかわらず無断で又貸しをした場合は、契約違反です。
また、民法612条では賃借権の譲渡及び転貸の制限が定められており、場合によっては違法行為になるケースもあります。
ここでは、又貸しが起こる状況の具体例について解説します。
外国人を住まわせる
外国人の入居を認めない賃貸物件は多く、来日したものの住居を見つけられない外国人は珍しくありません。
そこで、表向きは日本人が入居者として契約し、実際は外国人を住まわせ、又貸しの賃料を受け取っているケースがあります。
外国人のなかには不法滞在者もいるため、注意が必要です。
無断で同棲を始める
入居時は1人だったものの、しばらくして賃貸物件に恋人を迎え入れて2人で暮らし始めることがあります。
さらに同棲後に破局して契約者が部屋を出ていき、契約者ではない方が部屋に残って生活し続けるケースさえあります。
この場合、家賃滞納が生じても支払い義務は出ていった契約者にあるため、より複雑な問題が生じるでしょう。
無断でルームシェアを始める
貸主に無断で、友人とルームシェアを始めるケースがあります。
恋人と同棲を始めるケースと同様に、たとえ契約者が住んでいたとしても、無断で入居者を追加する行為は又貸しに該当します。
ルームシェアの問題点は、入居者が次々と入れ替わる可能性がある点です。
入れ替わりによって、いつの間にか契約者がいなくなっていたケースもあります。
またルームシェアをする許可を得ていたとしても、当初伝えていた同居人から別の方に無断で入れ替わった場合は契約違反です。
無許可の民泊
賃貸物件の契約者が貸主に無断で民泊の営業を始める悪質なケースもあります。
不特定多数の方に宿泊施設として貸し出し、収益を得る方法です。
近年は、無断で民泊貸し出しをおこなった契約者に対し、多額の違約金を請求する貸主も増えています。
賃貸物件の又貸しにより起こり得るトラブル
賃貸物件の又貸しは契約違反なだけでなく、他のトラブルの引き金にもなるため、早急に対応する必要があります。
ここでは、又貸しにより起こり得るトラブルとして「家賃滞納」「近隣トラブル」「物件の破損」「問題がある属性の方の入居」に分けて解説します。
家賃滞納
又貸しを容認していると、家賃滞納が起こりやすくなります。
又貸しにより賃貸物件に住んでいる方は、入居審査に通りにくい方であるケースが少なくありません。
収入が低いなど支払い能力に問題がある可能性もあり、家賃が払えなくなるリスクが考えられます。
家賃滞納があった場合、貸主は借主に催促をし、最終的には立ち退きなどの法的措置をとることになります。
しかし、又貸しをしていると契約者本人に連絡がとれず、対応が困難になるかもしれません。
近隣トラブル
又貸しは契約違反であり、又貸しをおこなう方はモラルが低いため他のルールも破る可能性があるといえます。
騒音を出す、ゴミ出しのルールを守らないなど、近隣トラブルを起こすリスクが高いかもしれません。
近隣住民からのクレームは貸主に向けられます。
適切に対処しないでいると、他の入居者の不満が高まっていくため注意が必要です。
物件の破損
自分で契約せずに又貸しによって住んでいる場合、物件に対する責任意識が低い可能性があります。
部屋や設備を大切に扱わず、汚したり破損させたりするかもしれません。
退去時に著しい破損が見られた場合、修繕費用や損害賠償は借主に求めることになります。
契約者本人が住んでいなかった場合「壊したのは自分ではない」などと主張され、責任の所在があやふやになるおそれがあります。
その場合、正当な請求が難しくなる可能性があるため注意しましょう。
問題がある属性の方の入居
賃貸物件の入居審査では、収入や年齢だけでなく、入居希望者の属性を判断します。
近隣トラブルや風紀の乱れなどを避けるため、特定の属性を持つ方の入居を認めない貸主は珍しくありません。
しかし又貸しの場合は入居審査を経ずに入居できるため、貸主が好まない属性を持つ方が住み始める可能性があります。
又貸しに気付いても放置している期間が長引くと、法的に「黙示の承諾」とみなされ契約解除が難しくなるケースもあるため、注意が必要です。
賃貸物件の又貸しが見られた場合の入居者への対応について
賃貸物件の又貸しが見られた場合、貸主は段階的に適切な対応をする必要があります。
ここでは「事実確認をする」「契約を解除するかを決める」「契約者が音信不通な場合」に分けて解説します。
事実確認をする
賃貸物件において又貸しが疑われる状況がある場合は、まず契約者に事実確認をする必要があります。
又貸しの経緯について契約者に確認し、又貸しで貸主が被る迷惑についても具体的に説明します。
契約者が話し合いに応じない場合は、現場調査による確認が必要です。
表札や人の出入り、契約者の住民登録などの情報を収集します。
ただし、貸主でも契約者の許可なく賃貸物件の室内には入れない点に注意しましょう。
また、又貸しで入居している方に家賃を請求してしまうと、又貸しの承諾とみなされる可能性があります。
法的な手順については、弁護士などの専門家に相談しながら進めていくことがおすすめです。
契約を解除するかを決める
又貸しの事実が発覚した場合は、契約を解除するかどうかを決められます。
ルームシェアの場合、契約者以外の入居者は出ていくなど、状況を改めたうえで契約者との契約を続行するのもひとつの選択肢です。
契約解除を決めても入居者が明け渡しを拒否する場合は、強制執行がおこなえます。
契約者に対し退去費用や修繕費用、違約金の請求も可能です。
契約者が音信不通な場合
契約者が音信不通な場合、契約解除の意思を通知するのが困難なケースがあります。
その場合、まずは保証人や契約書に記入された緊急連絡先、家族などに連絡をとります。
関係者から契約者に連絡をとってもらい、話し合いが実現すれば、契約解除を進められるでしょう。
関係者を通しても連絡ができない場合は、訴訟を起こして契約を解除する必要があります。
音信不通の相手に対して訴訟を起こす場合は、公示送達を利用します。
公示送達とは、連絡先の分からない相手に連絡したとみなす手続きのことです。
一定期間裁判所の掲示板に訴状を掲示するなどして、相手方に書類を送付したとみなします。
このような方法もあるとはいえ、一度又貸しをされると貸主は多くの負担を強いられるため、又貸しをされないための対策をとることも大切です。
賃貸借契約書には又貸し禁止や違約金発生の旨を明記し、口頭でもしっかりと説明しましょう。
契約者の人物像をよく吟味し、又貸しをしそうな信頼性の低い方とは契約しないことも大切です。
まとめ
賃貸物件の又貸しとは、入居者が貸主に無断で第三者に部屋を貸すことを指します。
又貸しは家賃滞納や近隣トラブル、物件の破損などの他のトラブルを生む可能性もあるため、放置してはいけません。
又貸しの対応方法としては、まず事実確認をしてから契約を解除するかどうかを決め、解決しなければ法的措置も検討します。