契約書なしでも家賃の支払い義務はある?家賃滞納時の対応についても解説
賃貸経営では、家賃滞納が深刻な問題となることがあります。
とくに、契約書がない場合、支払い義務の有無や立ち退き請求の可否が気になる方も多いでしょう。
口約束でも賃貸契約は成立するため、トラブルを防ぐための対策を知っておくことが大切です。
そこで本記事では、契約書なしの家賃滞納時の対応や、賃貸借契約書の必要性について解説します。
家賃の滞納でお困りのオーナー様は、ぜひこの記事をご参考になさってください。
契約書なしの家賃滞納は支払いの義務はあるのか
賃貸物件の管理や経営において、契約書が存在しない場合の家賃滞納は、大家や管理者にとって大きな不安要素となります。
しかし、口頭での合意のみで賃貸契約が成立しているケースも少なくありません。
家賃の金額や支払い日、契約期間などを明確に取り決めずに入居を認めてしまうと、後から不都合が生じる恐れがあります。
口頭での合意があったとしても、その内容が第三者に証明しづらいため、滞納などの問題が起きたときには紛争が長引く要因ともなります。
口約束
日本の民法では、契約の形式を問わず、当事者同士の合意があれば賃貸契約は成立します。
つまり、契約書がなくても口約束で契約は有効とみなされ、借主には家賃を支払う義務が発生します。
ただし、口約束のみでは家賃や敷金、契約期間などの重要事項について記録が残らず、貸主と借主の認識が食い違うケースが多いです。
さらに、家賃滞納や物件の使用方法に関するトラブルが起きても、証拠が乏しいため解決に時間と労力がかかる可能性が高まります。
また、口頭だけのやり取りでは、賃貸借契約の存在を客観的に証明できず、法的手続きをとる際に貸主側が不利になることもあります。
こうしたリスクを軽減するためには、契約書の作成が不可欠です。
契約書には、家賃の金額や敷金・礼金の有無、支払い方法と支払い期日、契約の更新条件、修繕の範囲などを具体的に明記します。
これにより、双方の合意内容が明確になり、将来的な紛争を避けることができるのです。
とくに、家賃滞納が発生した場合に備えて、支払い遅延損害金や解除条件などを盛り込むことで、貸主と借主の双方がトラブル回避に向けた意識を共有できます。
契約書がない状態で借主が家賃を滞納すると、貸主は家賃の支払い履歴や口頭の約束内容を立証する必要があります。
支払い履歴の記録や、やり取りを示すメールやメッセージがあれば一定の証拠にはなりますが、契約書があれば立証がより簡単です。
借主側も、自身の義務や権利を理解しやすくなるため、契約内容を巡る誤解やトラブルを防ぎやすくなります。
専門家に相談して契約書を作成することで、法的トラブルのリスクを最小限に抑えられるでしょう。
賃貸借契約書の重要性と賃貸借契約書なしの場合に起こりうるトラブル
賃貸借契約書は、貸主と借主の双方の立場を守る役割を担います。
書面化された契約によって、家賃や契約期間、更新条件、解約手続きなどの基本的事項から、修繕費用の負担やペットの飼育の可否など詳細なルールまで共有できます。
契約書が存在しないと、これらの事項が曖昧になりやすく、後から「聞いていなかった」「説明がなかった」というトラブルが発生しがちです。
とくに、賃料の値上げや更新料の有無なども、事前に定めておかないと深刻な紛争の原因となる場合があります。
契約期間
契約期間が定められていない場合、いつまで住めるのか、いつ退去するのかが不明確になります。
更新や解約に関する取り決めがないと、貸主と借主の意向が合わずトラブルに発展することもあります。
また、退去時期が不明確だと次の入居者を募集するスケジュールが立てにくく、空室期間が長引いて貸主の収益に悪影響を及ぼす可能性があるため、契約期間の設定は非常に重要です。
原状回復義務
契約書がないと、退去時にどの範囲まで原状回復をおこなうべきかが定かではありません。
通常の使用で生じる損耗や、経年劣化を貸主と借主のどちらが負担するかも曖昧になり、費用負担の押し付け合いで揉めることがあります。
また、借主が過失によって物件を傷めた場合の修繕費用が、どちらに帰属するか明記されていないと、貸主に想定外の費用負担が生じるリスクが高まります。
修理費用
エアコンや給湯器などの設備が故障した際、修理費用を貸主が負担するのか借主が負担するのかについても、契約書がないと判断が難しくなります。
修理の範囲や方法に関する取り決めがなく、借主が無断で修理を依頼してしまうと、結果的に品質が低下する危険もあります。
さらに、修理を拒否して放置した場合、物件の劣化が進み貸主にとって大きな損失となる可能性があるため、明確なルールづくりが大切です。
賃貸借契約書がない入居者が家賃滞納したら立ち退き要請できる?
賃貸借契約書がない状態でも、家賃滞納が深刻な状況となれば、立ち退きを検討せざるを得ない場合があります。
しかし、賃貸人が勝手に部屋を明け渡させることは許されず、借地借家法の定めに基づく適切な手続きが必要です。
また、家賃滞納が解消されない場合、賃貸人として物件の維持管理に支障を来す可能性もあるため、早期に対応することが求められます。
以下では、立ち退きのために重要となる正当な事由と、予告について詳しく解説します。
正当な事由
日本の借地借家法では、賃貸人が賃貸借契約を解除し、入居者に立ち退きを求める場合、正当な事由が求められます。
家賃滞納は、重大な契約違反に該当する可能性が高いですが、滞納の期間や回数、入居者の経済状況などが総合的に考慮されます。
一時的な経済的困難による短期間の滞納であれば、正当な事由と認められないこともある一方、長期にわたる滞納や繰り返しの滞納がある場合は、立ち退きが認められる可能性が高まるでしょう。
また、賃貸人と入居者のそれぞれの事情や、立ち退き料の提示の有無なども総合的に判断される点に留意が必要です。
予告
正当な事由が認められても、適切な予告期間を守らなければ、契約を解除して立ち退きを求めることはできません。
借地借家法では、契約期間がある場合、契約満了の1年前から6か月前までに更新しない旨を通知する必要があります。
通知が遅れると、契約が自動更新されることがあるため注意が必要です。
一方、契約期間に定めがない場合は、6か月前に解除の予告をおこなわなければなりません。
いずれの場合も、内容証明郵便など証拠を残せる手段での通知が望ましく、万一に備えて書面でのやり取りを徹底することが大切です。
もし予告後も立ち退きに応じないときは、裁判所の手続きを経て強制執行をおこなう必要があります。
こうした法的手段を取る際、契約書の有無によっては手続きのスムーズさが大きく変わるため、早めに専門家へ相談することが得策です。
契約書がない場合でも、家賃滞納が正当な事由と認められ、予告期間を守ったうえで適切に手続きを進めれば立ち退きを求められます。
ただし、個別の事情によって結論が異なることもあるため、早めに法律の専門家へ相談して状況を整理することが大切です。
まとめ
契約書がなくても家賃の支払い義務が発生する可能性があるため、契約内容の確認は重要です。
賃貸借契約書がないと、契約期間や修理費用に関するトラブルが発生しやすく、リスクが高まります。
立ち退き要請には正当な事由と適切な予告が必要なため、契約書の作成と管理を徹底しましょう。