賃貸経営における家賃滞納による影響は?強制退去までの流れや防止策も解説
賃貸物件のオーナーになることで、入居者から家賃収入を得ることができます。
しかし、オーナーになると、入居者の確保や物件の維持など、数多くの課題に向き合わなければなりません。
この記事では、課題の1つでもある家賃滞納による影響のほか、強制退去までの流れや防止策についても解説しますので、賃貸経営をおこなっているオーナーはお役立てください。
賃貸経営における家賃滞納による影響
賃貸経営をおこなっているオーナーにとって、入居者に家賃を滞納されるのは収入確保の点で大きな問題です。
ここでは、家賃滞納によって発生が見込まれる影響について解説します。
また、家賃滞納が続くと経営全体に影響が及び、オーナーの資金繰りを圧迫するリスクも高まります。
アパートローンの支払いが滞る
アパートの建築にあたって金融機関からアパートローンを融資してもらうと、家賃収入によってローンを返済するのが一般的な流れです。
アパートローンを借りているオーナーにとって、入居者による家賃滞納はローン返済に大きな影響を及ぼします。
入居者から長期にわたって滞納されると、手持ちの資金に余裕がないときには、ローンの支払いに行き詰ってしまう可能性があります。
さらに、空室が多発しているなどの課題が発生している場合は収支が赤字になり、経営破綻につながるかもしれません。
新規入居者の募集ができない
賃貸経営においては、家賃収入を確保するうえで、空室対策が重要な取り組みの1つです。
空室が発生するときには、不動産会社への依頼などによって、新規入居者を募集する必要があります。
空室であれば、新規入居者の募集によって、家賃収入を確保するよう取り組めますが、滞納が続くと退去してもらわなければ募集をかけられません。
また、長期不在などの連絡がつかないような悪質な入居者の場合は、オーナーは大きなリスクを抱えることになります。
さらに、賃貸物件から入居者に退去してもらうのは、裁判が必要になるなどのように容易ではありません。
裁判になるほどのトラブルにまで発展すると、明け渡しが認められるまで家賃収入を得られないだけでなく、弁護士への報酬を支払う必要があります。
そのため、家賃の滞納は、空室対策とは比較にならないほどに解決が難しい、賃貸経営における死活問題といえるでしょう。
退去時の原状回復
賃貸物件において、入居者は退去時に原状回復するように賃貸借契約書で規定するのが一般的です。
しかし、相手が家賃の滞納者の場合は、原状回復にかかる費用を回収できる見込みは高くありません。
家賃の支払いルールを守らない入居者が居住している部屋は、床に傷があったり、タバコのにおいが蔓延していたりする可能性も低くはないといえるでしょう。
そのため、原状回復費用が高額になっても、オーナーが負担することになりかねません。
賃貸経営での家賃滞納から強制退去までの流れ
家賃滞納が生じると、安定した賃貸経営をおこなううえで、毅然とした態度で退去を求める必要があります。
ここでは、家賃滞納から強制退去までの流れについて解説します。
督促
まず、家賃の滞納が生じたら、管理委託をしている不動産会社から入居者に督促がおこなわれます。
その際、入居者が応じないときには、不動産会社は連帯保証人へ連絡します。
賃貸借契約で連帯保証人を設定しているケースでは、入居者の代わりに連帯保証人に滞納分を立て替えてもらうことが可能です。
入居者に厳しく対応する連帯保証人であれば、以降の滞納が解消される可能性があります。
一方で、家賃保証会社への加入を条件としている賃貸借契約の場合は、不動産会社が家賃保証会社へ連絡します。
この場合には、家賃保証会社が入居者に代わって、家賃を立て替えてもらうことが可能です。
入居者が生活費の工面に苦しんでいるときは、翌月も滞納が続く恐れがあるので注意しなくてはなりません。
内容証明郵便
滞納してから1か月が経過しても、入居者や連帯保証人から家賃が支払われない場合は、内容証明郵便による督促が必要です。
内容証明郵便は、督促の事実を証明できるため、この先に生じる可能性がある法的措置において重要な意味を持ちます。
不動産会社に対応を依頼して、実行してください。
明け渡しの請求
内容証明郵便による督促にも応じてもらえないときは、部屋の明け渡しを求める次のステップに進みます。
裁判では、明け渡し訴訟などに費用がかかるうえ、結果が出るまで半年ほど家賃を回収できません。
そのため、裁判を回避し、任意明け渡し請求による解決を目指すのが良いでしょう。
任意明け渡し請求では、滞納期間の家賃を免除するなどの条件を提示して、早期退去を求めることになります。
明け渡し訴訟にかかる費用を考慮すれば、早期に解決できる可能性があるため、不動産会社と相談してみましょう。
法的措置
任意明け渡し請求をおこなっても、支払いに応じてもらえないケースはあり、問題が解決しないこともあるかもしれません。
入居者が仕事をしていて支払い能力がある場合は、裁判所に支払督促を依頼するのが良いでしょう。
裁判ほどの手間をかけずに書面で督促できて、入居者への効力が高いことや費用を抑えられることがメリットです。
また、60万円以下の金銭を請求する手続きとして、少額訴訟も1つの選択肢になります。
原則として、1回の審理で判決がいい渡される仕組みになっており、強制執行による差し押さえで、滞納家賃を回収できる可能性があります。
しかし、入居者に支払い能力がなければ、支払督促や少額訴訟でも目的を達成するのは困難です。
入居者に支払い能力を見込めない場合や支払う意思がないときは、最終手段として強制退去を求めるしかありません。
半年ほどの期間と50万円ほどの費用をかけて、入居者との間で裁判をおこなうことになります。
オーナーにとっても負担が大きい手段であるため、法的措置に至る前に解決を図ることが望ましいです。
賃貸経営において家賃滞納を未然に防ぐ方法
家賃の支払いを自動振り込みに変更すると、家賃滞納のリスクを抑制できますが、入居者の口座残高が不足している場合は、やはり滞納が生じてしまう可能性があります。
クレジットカード払いは、滞納を防ぐうえで効果的で、カードの限度額に余裕がある限り、家賃を回収できます。
近年の賃貸借契約では、連帯保証人を不要とする物件が増えていますが、収入のある家族や親族に限定して、連帯保証人の設定を条件にすることも可能です。
入居者は、連帯保証人に迷惑をかけないように心がけるのが一般的なため、滞納を防ぐ対策の1つになります。
ただし、万一に備えて、連帯保証人の支払い能力についても慎重に審査しましょう。
一方、連帯保証人ではなく、家賃保証会社へ加入してもらう場合は、家賃保証会社に立て替えてもらう段階で、入居者の家計が厳しくなっているおそれがあるかもしれません。
最悪の事態を避けるためにも、不動産会社に相談するなどのように早期に対策を打ちましょう。
まとめ
賃貸経営において、家賃滞納は空室対策よりも解決が難しい傾向のある問題です。
一度入居を認めると、退去させるには相当の労力と費用を要します。
入居審査では、収入だけでなく、人柄も慎重にチェックすることが大切です。
家賃収入の確保が安定した賃貸経営を支える要となるため、日頃から滞納リスクを軽減する対策を意識しておきましょう。