賃貸借契約における債務不履行とは?事例と契約解除の条件も解説

賃貸物件を経営している方のなかには、入居者の家賃滞納やルール違反といったトラブルを抱えている場合もあるでしょう。
賃貸借契約では、債務不履行が認められると契約を解除できる場合があるため、トラブルを対処する方法の1つとして理解を深めましょう。
今回は、賃貸借契約における債務不履行とはなにか、例や債務不履行を理由に契約を解除するための条件について解説します。
賃貸管理・賃貸経営をしていて、入居者とのトラブルを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
賃貸借契約における債務不履行とは

まずは、債務不履行とはなにか、概要と種類について解説します。
債務不履行とは
自分が所有する不動産を賃貸物件にする場合、相手が信頼できる人物かどうか確認するために、入居審査をおこなうのが一般的です。
賃貸借契約は、借主と貸主双方の信頼関係にもとづいて結ぶものであり、契約で約束したことは守る義務があります。
しかし、なかには借主が約束を守らない場合も珍しくありません。
債務不履行とは、契約内容や法律で定められているルール、取引の条件などにしたがった履行をしないことをいいます。
簡単にいうと、債務不履行とは「賃貸借契約における義務を果たさないこと」です。
債務不履行の種類
債務不履行には、以下の3つの種類があります。
●履行遅滞
●履行不能
●不完全履行
これら3つの種類について、順番に解説します。
1つ目は、「履行遅滞」です。
履行遅滞とは、債務者が契約で定められた期日までに債務を履行しないことです。
何日までに支払うと約束していたのに、期日を過ぎても支払わないケースが該当します。
2つ目は、「履行不能」です。
履行不能とは、履行が不可能になることです。
たとえば、故意または過失により使えなくなったような場合が該当します。
3つ目は、「不完全履行」です。
不完全履行とは、履行はするけれど内容が不完全であることです。
たとえば、債務者が納品した商品が、債権者の注文と違うものだったといった場合が該当します。
このような債務不履行が発生した場合、債権者は債務者に損害賠償請求をおこなうことが可能です。
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賃貸借契約における債務不履行の例

債務不履行の概要や種類について前章で解説しましたが、では賃貸借契約における債務不履行とは、どのような場合が該当するのでしょうか。
そこで次に、賃貸借契約における債務不履行の例について解説します。
賃料を払わない
借主が賃料を支払わないといったトラブルは少なくありません。
これは、賃貸借契約における債務不履行の代表例です。
賃貸物件では、借主が賃料を支払うことを前提に賃貸借契約を結び、貸主は不動産を貸します。
それにも関わらず賃料を支払わない場合は、借主と貸主の信頼関係に大きな影響を及ぼすでしょう。
ただし、賃料を支払わない期間が1、2か月では債務不履行に該当する可能性は低いです。
案件によって異なりますが、最低3か月以上滞納した場合に債務不履行とみなされる可能性があります。
なお、賃料を滞納しても、正当な事情があると判断された場合は、債務不履行にはなりません。
無断で転貸した
転貸(てんたい)とは、借主が貸主から借りている賃貸物件をほかの第三者に貸す行為のことです。
民法において、貸主の承諾を得ずに借りたものを転貸することは禁止されています。
借主が転貸した場合は、違反行為にあたります。
たとえば、居室が複数ある賃貸物件に住んでおり使わない居室があった場合、居室を第三者に貸すことも違反行為です。
したがって、無断で転貸した場合も債務不履行に該当します。
ただし、貸主の許可を得ていれば問題ありません。
契約時の使用目的に反している
賃貸借契約では、借主がどのような用途で物件を借りるのか、使用目的を定めて契約するのが基本です。
たとえば、居住用として賃貸借契約を結ぶ場合は、居住以外の用途で使用することは認められません。
これは、賃貸物件で業務をおこない、不特定多数の人が出入りすることによってほかの住人とトラブルになったり、室内や設備の損耗がひどくなったりすることを避けるためです。
もし居住用の物件を店舗やオフィスとして使用した場合、それは契約違反であるため、債務不履行に該当します。
とはいえ、最近は自宅でパソコンを使って仕事をする方も増えています。
そういった場合では、ほかの住人に迷惑をかけず、設備などの損耗にも大きな影響を与えないのであれば、問題にならないことがほとんどです。
ただし、会社を成立し、会社の所在地を賃貸物件にした場合は、違反行為とみなされます。
禁止されている行為をした
賃貸借契約には、禁止行為に関することも記載されています。
たとえば、ペットの飼育や楽器の演奏を禁止するといった内容です。
また、単身用の学生マンションであれば、学生以外の複数人で居住するのも禁止されています。
賃貸借契約で禁止されている行為をおこなった場合は、違反行為として債務不履行に該当します。
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賃貸借契約における債務不履行で契約を解除するための条件

賃貸借契約における債務不履行が発生した場合、原則として、貸主は契約を解除することができます。
しかし、借主は物件が生活の基盤となっているため、すぐに契約を解除して退去してもらうことは難しいのが実状です。
では、どのような状況であれば賃貸借契約を解除できるのでしょうか。
最後に、債務不履行を理由に賃貸借契約を解除できる基準について解説します。
契約解除が可能になるポイントは「信頼関係の破壊」
信頼関係の破壊とは、信頼関係が形成されていることを前提とした継続的契約において、著しく信頼関係が破壊されたと判断できる場合にのみ、催告したうえで契約を解除できるという理論です。
言い換えれば、契約を解除する場合は、信頼関係が破壊していることが条件となります。
しかし、信頼関係の破壊に明確な基準はありません。
たとえば、貸主が賃料を支払わなかった場合では、単に滞納したという事実にくわえ、滞納した期間や金額、理由、交渉の経過など、状況や事情を総合的に考慮して判断されます。
もし、債務不履行が信頼関係を破壊するほどのものでないとみなされた場合、契約を解除することはできないのです。
賃貸借契約は、借主が手厚く保護されているという側面があります。
したがって、債務不履行を理由に契約を解除するためには、信頼関係が破壊されたことを強く立証することが大切です。
専門家に相談するのがおすすめ
債務不履行を理由に契約を解除する場合、貸主が自己判断で行動を起こしても、借主が応じない場合があります。
揉め事になるとトラブルに発展し、裁判になる可能性もあります。
先述のとおり、借地借家法等により借主は強く保護されているため、貸主が借主の債務不履行をしっかりと立証しなければなりません。
スムーズに契約を解除するためには、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
直接やり取りすると感情的になり、話がまとまらない可能性があります。
したがって、債務不履行に関するトラブルは、弁護士に相談し、手続きや交渉を任せたほうが良いでしょう。
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まとめ
賃貸借契約における債務不履行とは、契約内容や法律で定めたルールを守らない行為のことです。
たとえば、賃料の不払いや無断転貸、禁止行為などが挙げられ、債務不履行が認められると契約を解除することが可能です。
そのためには、信頼関係の破壊を立証する必要があるため、自己判断で行動せず、専門家に相談しながら解決を目指すようにしましょう。

株式会社エムズ
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