DIY型賃貸借とは?賃貸経営での活用メリットについても解説

DIY型賃貸借とは?賃貸経営での活用メリットについても解説

賃貸経営の新たな形として注目されているのが、入居者自身が自由に内装を手がけられるDIY型賃貸借です。
この契約形態は、入居者にとって創造的な住まいづくりが可能となる一方で、貸主にも物件活用の幅が広がる利点があります。
ただし、通常の賃貸契約とは異なる点が多く、契約前にしっかりとルールを確認しておくことが大切です。
本記事では、DIY型賃貸借の基本的な仕組みやメリット、注意すべきポイントを詳しく解説します。

賃貸経営DIY型賃貸借の概要と一般契約の違い

賃貸経営DIY型賃貸借の概要と一般契約の違い

DIY型賃貸借とは

DIY型賃貸借とは、借主が事前に合意した範囲で内装を改修できる賃貸借契約です。
壁紙の貼り替えや収納棚の増設など、自分の好みに合わせた住まいを実現できる点が特徴です。
改修費用は一般的に借主負担ですが、家賃は物件や交渉によって異なり、必ずしも低くなるとは限りません。
改修内容は書面で定めるため、施工内容や原状回復義務の範囲が明確になり、トラブルを防止できます。
たとえば、躯体や配管に影響しない軽微な変更であればメール一本で承認されることが多い一方、間取り変更など構造安全性に関わる工事は設計図面の提出や資格のある業者による施工が前提となる場合が一般的です。
さらに、契約期間中に付加された設備を退去時に残置するか撤去するかをオプション欄で明示しておくと、次の入居者への引き継ぎが円滑になります。

国土交通省が示す指針と背景

国土交通省は、平成28年4月に「DIY型賃貸借に関する契約書式例」とガイドブックを公表し、平成30年3月に改訂版と家主向け手引きを公開しました。
背景には空き家の増加や住宅の老朽化があり、これらの課題解決策として注目されています。
指針は改修範囲や退去時の取り扱いを明確化することを推奨し、付加価値が高まった物件は空室対策にもつながります。
貸主は費用をかけずに魅力を高められ、借主は初期費用を改修に充てて個性のある空間を得られるでしょう。
さらに、自治体によってはDIY型賃貸借に関する相談窓口や補助金制度を設けている地域もあり、事前に行政サービスを調べておくことでコスト面のメリットがさらに広がります。

賃貸借契約(一般)との主な違い

DIY型賃貸借では、事前に合意した範囲で改修が可能です。
たとえば、借主が取り付けた棚や照明を次の入居者が引き継ぐこともあります。
これは物件の価値を高める要素となり、貸主にも利益をもたらします。
また、契約時には改修内容を記載した書面を交わすため、責任や義務が明文化され、退去時のトラブルも回避しやすくなるでしょう。
一方、一般的な契約では借主による改造は原状回復義務の範囲にあるため、無断施工は契約違反となる場合がほとんどです。
DIY型賃貸借は、このルールを緩和し価値向上を狙う点が大きな相違点であり、欧米で普及する「ビルド・トゥ・スーツ」の発想に近い仕組みといえます。
さらに、途中解約時の設備買取請求権を排除する特約が登場するなど、双方の経済的リスクを下げる工夫も広がっています。

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賃貸経営DIY型賃貸借のメリット・デメリット

賃貸経営DIY型賃貸借のメリット・デメリット

空室対策としての活用メリット

まず、DIY型賃貸借は空室対策に有効です。
築年数が経過した物件や設備が古く見える住宅でも、借主の自由な改修により魅力的な空間へ変えられるため、入居が決まりにくい物件でも募集期間を短縮できます。
ナチュラル系の内装やカフェ風デザインを好む若年層など、個性的な住空間を求める層に強く訴求し、特に差別化が難しい都市部で戦略的価値が高まるでしょう。
さらに、SNSでの完成後シェアを入居条件に盛り込むオーナーも増えており、物件のPRを入居者が担う形で広告費の圧縮につながる点も重要です。

修繕負担の軽減とコスト面の利点

DIY型賃貸借の大きな利点は、貸主の修繕負担を軽減できる点です。
入居前のクロス張り替えや床補修などを借主が自己負担でおこなうため、初期費用を大幅に抑えられます。
また、費用負担を借主に移転できるため、貸主は運営コストを圧縮できます。
築古物件でも、空室リスクを抑えつつ実用的に収益化できる点は大きな魅力です。
ただし、借主が負担した設備や素材の品質が低いと将来の補修費が増加する懸念があるため、資材のグレード基準や保証期間を契約時に明示しておくことが望まれます。
近年はDIY用材料の性能が向上しており、無垢材や漆喰など環境負荷の低い資材を指定することでサステナビリティを訴求する付加価値戦略も可能です。

契約管理やトラブルのデメリット

DIY型賃貸借には契約管理が煩雑になるデメリットがあります。
借主の施工が構造や安全性に影響する恐れがあるため、貸主は改修計画を確認し、必要な制限を設けなければなりません。
さらに、責任分担を明確にしなければ法的トラブルに発展する可能性もあります。
水回りや電気工事で不具合が生じた場合、責任分担が曖昧なままでは貸主が補償を負う恐れもあります。
重要設備の不具合に備え、損害賠償の取り扱いを特約で定めておくと安心です。
特に消防法や建築基準法に抵触する恐れのある工事は自治体の完了検査が必要になる場合があるため、専門家のチェック体制を用意することが不可欠です。

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賃貸経営DIY型賃貸借の注意点

賃貸経営DIY型賃貸借の注意点

追加書類の準備と管理の必要性

DIY型賃貸借を導入する際は、通常の賃貸借契約に加え、改修工事の「申請書」や「合意書」などを整備する必要があります。
これにより、借主の工事内容や範囲、責任分担が明文化され、トラブルを未然に防げます。
作業記録や工事後の写真を保存しておけば、今後の管理資料としても活用できるでしょう。
さらに、オンラインで申請から承認までを管理できるクラウド型プラットフォームを活用すれば、書面の行き違いを防ぎ、履歴の透明性も高められます。
とくに、複数物件を所有するオーナーにとっては、物件ごとに異なる改修履歴を一元管理できるため、保守計画の立案効率が向上します。

取決め事項の明文化と共有の重要性

DIY型賃貸借では、あいまいなまま契約を進めると後々の火種になります。
貸主と借主が合意した内容を文書で残し、契約書に添付して双方で保管することが不可欠です。
また、改修可能範囲、禁止工事、騒音や作業時間のルールを具体的に記載します。
くわえて、入居後に合意内容を見返せるよう、共有フォルダやLINEグループで最新版の契約書を常にアクセス可能にしておくと、細かな問い合わせへの対応時間を削減できます。

契約前に確認すべきDIY工事の制限範囲

DIY型賃貸借を導入する際は、工事範囲に明確な制限を設けることが不可欠です。
構造に影響する改修や水道・電気などライフラインの工事は、許可制や全面禁止、有資格者による施工とするなどの措置が必要です。
重要設備の改修は法令に基づき専門業者がおこない、行政手続きも遵守します。
騒音・振動トラブルを防ぐため、作業時間帯や方法のガイドラインも定めます。
施工後は写真や報告書を提出させ、貸主が状況を正確に把握できるようにしましょう。
とくに、外壁や窓サッシの交換は建物全体の断熱性能や防火規制に影響するため、自治体の補助金対象かどうかを含めて事前調査をおこなうと、思わぬコスト削減につながる場合があります。
また、防音性能を高める二重窓の設置など周辺環境への配慮を条件に工事を認める事例も増えており、入居者満足度と地域の良好な関係維持を両立する要素として注目されています。

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まとめ

DIY型賃貸借は、入居者が自由に内装を手掛けられることで物件の魅力が高まり、空室対策としても有効です。
オーナー側は修繕負担を軽減できる一方で、施工内容の管理や法令遵守、トラブル防止への配慮が求められます。
契約内容を明確にし、入居者との事前合意をしっかり行うことで、安定した賃貸経営につなげることが大切です。

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