不動産売却で年金は減るのか?譲渡所得や生活設計の注意点も解説

不動産売却で年金は減るのか?譲渡所得や生活設計の注意点も解説

老後の生活資金を見直すなかで、不動産売却が年金に与える影響について気になっている方もいるでしょう。
基本的には、不動産を売却しても年金の受給額に直接的な影響はありませんが、売却益が出た場合の税金には注意が必要です。
とくに、譲渡所得にかかる課税や確定申告、住民税の扱いなど、各種手続きの確認を怠ると思わぬ負担が生じることもあります。
この記事では、不動産売却と年金の関係性や気をつけたいポイントについて、解説していきます。

不動産売却による年金の減額とは

不動産売却による年金の減額とは

高齢化が進む中、多くの年金受給者が住み替えや資産整理の一環として不動産売却を検討しています。
しかし、「不動産を売却したら年金が減らされるのではないか」と不安に感じる方も少なくありません。
実際には、ほとんどの場合で不動産売却が年金の支給額に影響することはありません。
以下では、その根拠と具体例について解説いたします。

年金は減額されない

不動産売却で得た収入は一時的所得に区分されるため、老齢基礎年金・厚生年金の支給額が減ることはありません。
例外として在職老齢年金制度(月51万円超で調整)があり主に給与所得が対象であり、売却益は基本的に含まれません。
売却資金は老後資金の補填や介護費用の準備に自由に充当でき、取引時期を理由に先送りする必要はないと言えます。
なお、売買契約に伴う手付金や預り金も同様に減額判定の対象外です。
もし、売却した年に公的年金以外の継続所得が見込まれる場合でも、年金の停止判定は翌年度の所得状況を踏まえて再計算されます。
そのため、一時的な売却益と翌年以降の生活費を切り分けて考えることで、資金計画を立てやすくなります。

障害基礎年金

障害基礎年金には所得制限がありますが、判定は控除後所得でおこなわれるため、売却益の全額が影響するわけではありません。
前年の所得が4,721,000円+扶養親族×38万円を超えると、翌年度は全額停止となります。
ただし、一時的に基準を超えても翌年に再判定されるため、恒常停止にはなりにくいです。
一時停止となっても基準内に戻れば自動で再支給されるため、売却益を理由に制度を諦める必要はありません。
確定申告で各種控除を活用し課税所得を抑えれば停止リスクをさらに軽減できます。
基準や運用は自治体で差があるため、事前に年金事務所へ確認し専門家と所得見通しを共有しましょう。
住民税非課税枠を維持したい場合は、売却時期を年度末にずらし、翌年の所得計算期間を短くする手法も有効です。

年金受給者が不動産売却するときの税金

年金受給者が不動産売却するときの税金

高齢の年金受給者が不動産の売却を検討する際、「売却益に税金はかかるのか」「手元に残る金額はどれくらいなのか」といった疑問を抱かれることが多くあります。
年金を主な収入源としている方にとって、不動産売却に伴う税金の仕組みを正しく理解しておくことは、老後の生活設計にも大きく関わるでしょう。
以下では、譲渡所得税や住民税、そして確定申告の3点に絞って解説いたします。

譲渡所得税

不動産の譲渡益には「譲渡所得税」が課税され、所有5年以下なら短期(約30%+住民税9%)、5年超なら長期(約15%+住民税5%)が目安です。
自宅を売却する場合は居住用財産の3,000万円特別控除があり、転居後3年以内の売却なら譲渡益を最大3,000万円まで非課税にできます。
例として、長期所有住宅を3,500万円で購入し6,000万円で売却した場合、取得費と諸経費を差し引いた譲渡益2,000万円は控除枠内に収まり税額はゼロになります。
控除の適用には確定申告での届け出が必須なので、売却した年の翌年2月16日~3月15日までに忘れず手続きをおこないましょう。
利用条件を満たせば、譲渡損失が出た場合でも最長3年間の繰越控除が認められ、年金以外の所得から差し引くことができます。
これにより、翌年度以降の所得税と住民税を下げる効果も期待できます。

住民税

住民税は、自治体が課す税のことで基本税率は5%です。
譲渡所得が増えると翌年度から住民税非課税世帯でなくなる恐れがあり、介護保険料や高額医療費の自己負担上限も上がるため注意しましょう。
介護保険料が第2段階から第3段階に上がると、月額数千円の負担増となる事例もあります。
売却所得を年内に耐震改修費など、控除対象の支出と相殺すれば影響を抑えられます。
具体的な課税額は、市区町村のホームページや税額試算シートで事前確認できるため、活用すると資金計画が立てやすくなるでしょう。

確定申告

譲渡益が生じた年は年金受給者でも必ず確定申告が必要で、申告を怠ると追徴課税につながります。
取得費や仲介手数料、登記費用などを控除すれば課税所得を圧縮できるため、早めに資料を準備し「譲渡所得の内訳書」を添付しましょう。
電子申告(e-Tax)を利用すればマイナンバーカードで自宅から手続きでき、還付時期も短縮されます。
提出後は受理通知と控除適用の可否を必ず確認し、誤りがあれば更正の請求で修正しましょう。
譲渡所得の計算は複雑なため、国税庁の「譲渡所得の内訳書(兼計算明細書)」作成コーナーを活用すると入力漏れを防げます。

年金受給者が不動産売却するときの注意点

年金受給者が不動産売却するときの注意点

高齢期に入り年金を主な収入源とする方にとって、不動産の売却は大きな経済的決断です。
まとまった資金を得られる一方で、その後の生活や社会保険制度にどのような影響があるのかを事前に把握しておくことが大切です。
ここでは、年金受給者が不動産を売却する際にとくに注意すべき3つの観点についてご説明いたします。

税金

譲渡所得が発生すると所得税・住民税が課税されますが、3,000万円特別控除や軽減税率特例を利用すれば負担を減らせます。
譲渡益が大きい場合は、翌年6月に予定納税義務が生じる点も忘れないでください。
資金繰りが不安なら売却代金から概算税額を取り分け、納税資金を確保しておくと安心です。
特例適用の順序を誤ると控除が重複適用できなくなるため、売却前に税務署や税理士へ確認しておくと安心です。
要件確認と期限内の確定申告を徹底し、延滞税や無申告加算税を避けましょう。

国民健康保険料

譲渡益は、翌年度の国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料を押し上げる可能性があります。
控除を活用して課税所得を抑え、年金天引きか口座振替かを選びやすいよう自治体窓口で事前に相談しましょう。
保険料が急増した場合は、減免や分割納付制度の利用を検討すると負担を平準化できます。
年金以外の所得が低い場合でも、譲渡益によって医療費控除や介護サービス費の自己負担割合が変わることがある点も押さえておきましょう。

生活設計

売却後の住まい確保や引っ越し費用を含む生活設計を具体化し、資金は必要時に分割して取り崩すなど計画的に管理することが大切です。
高齢者は賃貸物件の入居を断られる場合があるため、保証人の確保や物件情報の早期収集をおこないましょう。
売却益の一部を公的年金の繰下げ増額やiDeCo、つみたてNISAなど長期運用に振り向ける選択肢も視野に入れましょう。
信頼できるファイナンシャルプランナーに面談し、資金使用計画をライフプラン表に落とし込むと具体的な行動に移しやすくなります。
持ち家を手放すことで固定資産税や修繕費の負担がなくなる反面、賃料が新たに発生するため、収支のシミュレーションをおこなうことも大切です。

まとめ

不動産を売却しても年金支給額には直接影響しませんが、所得増加により税金や保険料が変動する可能性があります。
一時的な収入増によって住民税や健康保険料が上がる場合もあるため、事前に制度を理解し備えておくことが大切です。
年金生活を圧迫しないためにも、計画的な資金管理と情報収集を徹底し、安心して売却を進めましょう。

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