スプリンクラーは必要?賃貸管理における安全対策についても解説

スプリンクラーは必要?賃貸管理における安全対策についても解説

入居者の安全を確保するためには、賃貸物件における設備の充実が欠かせません。
とりわけ火災発生時に初期消火をおこなうスプリンクラーは、被害を最小限に抑える役割を果たすものです。
ただし、その種類や設置義務の有無について正しく理解できていないケースも少なくありません。
本記事では、賃貸管理者が把握しておくべきスプリンクラーの基礎知識をわかりやすく解説いたします。

スプリンクラーとは

スプリンクラーとは

スプリンクラーは火災初期に放水し延焼を防ぐ設備です。
賃貸物件では仕組みと種類を理解し、適切に選定・維持することが求められます。
まずは、スプリンクラーの概要や役割について解説していきます。

スプリンクラーヘッドの仕組み

スプリンクラーヘッドは天井に設置され、感熱体で放水開始を制御します。
金属が溶けて開くヒューズ型と、液体膨張でガラスが破裂するガラスバルブ型の2種が主流です。
湿式方式は配管に常時水が満ち、感熱体が作動すると即座に放水します。
寒冷地向けの乾式方式では配管内を空気や窒素で満たし、弁が開いて水を送り込みます。
予作動式は火災報知器の信号を併用し、誤放水を避けたい区画に用いられるものです。
ヘッドはペンダント型、コンシールド型、サイドウォール型など外観や施工条件に応じ多彩です。
散水口の角度や散水量は設計段階で計算され、居室の熱溜まりを確実に押さえるよう配置されます。
定期点検では感熱体の劣化や塗装の有無を確認し、所定の年数で交換することが推奨されています。
さらに、天井改装時に塗膜が感熱体に付着すると作動温度が変化する恐れがあるため、内装工事と連動した再検査が必要です。
国土交通省のガイドラインでは、設備台帳の電子化により点検履歴を共有し、維持管理の効率化を図る方策も示されています。
こうしたデジタル管理は点検漏れの防止にも寄与し、長期的な維持費削減につながるでしょう。

消火設備としての役割

スプリンクラーは火元に最も近いヘッドのみが作動し、局所的に炎を抑えます。
放水量は1分間あたり約80ℓが基準とされ、天井面から放物線状に水膜を形成します。
消防法では高層共同住宅、病院、高齢者施設、地下街など延べ面積1,000㎡以上の建物に設置を義務付けています。
導入により入居者の安心感が高まり、火災保険料の割引や他防火設備の合理化といった経済的利点も得られるでしょう。
大型再開発ではスプリンクラー設備を前提に設計し、避難階段や防火戸の数を減らす事例も見られます。

火災感知と放水のタイミング

ガラスバルブ型は約70度で破裂し放水が開始され、圧力低下を検知したポンプが連続送水するため、消火が継続します。
乾式は空気圧の変化で弁が開き、予作動式は火災警報との連動で誤作動を抑制します。
配管は5分以内に水が到達するよう立管径と揚程を設計し、圧力試験で漏水の有無を確認します。
賃貸住宅では誤放水防止と定期点検が不可欠であり、信頼性の高い維持管理が求められるものです。
近年は遠隔監視システムが普及し、異常水圧やバルブ閉塞を自動通報するサービスも展開されています。
定期訓練で放水音や警報動作を体験させておくと、実火災時の避難行動が速やかになるため、年に1度の訓練が推奨されます。

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スプリンクラーの設置基準

スプリンクラーの設置基準

火災被害を抑えるには、建築基準と消防法に従った適切な設置が欠かせません。
賃貸管理者は義務範囲と手続きを把握し、計画段階から消防署と協議する必要があります。
承認を得ずに工事を進めると是正命令や使用停止命令が出る場合もあるため、書類管理を徹底することが大切です。

消防法に基づく義務と規定

病院、高齢者施設、百貨店、映画館、地下街など特定防火対象物で延べ面積1,000㎡以上の場合には設置が必要です。
飲食店や集会場では地階・無窓階1,000㎡以上、または4階以上10階以下で1,500㎡以上が基準となります。
複合用途ビルでは一部に該当施設があれば建物全体が対象となるため、設計段階での確認が重要です。
消防法施行令第12条は、用途変更時にも遡及設置を求める場合があることを明記しており、テナント入替時の留意点となります。
地方条例で基準が加算される自治体もあるため、同一規模でも地域差が生じる点に注意が必要です。
最新の条例改正は毎年度公開されるため、設計者は改定情報を定期的に確認する姿勢が求められます。

11階以上の建物に関するルール

11階建て以上の共同住宅や高さ31m超の建物では全階にスプリンクラーが必須です。
耐火構造や排煙設備などの条件を満たす場合は一部免除が認められますが、適用可否は事前協議で左右されるため専門家への相談が推奨されます。
高層階では消防隊の放水圧が不足する恐れがあるため、屋上に補助水槽と加圧ポンプを設ける計画が一般的です。
免除を受ける場合でも、避難経路の確保や防火戸の耐火性能強化など代替措置が必要になります。

一部施設における免除条件

小規模事務所など使用人数が限られる建物は、他の防火設備を備えることで設置を省略できる場合があります。
準耐火建築物で不燃仕上げを採用した場合なども緩和対象ですが、所轄消防署による個別判断が必要です。
免除申請では防火区画図、避難計画、内装材試験成績書など多岐にわたる書類を提出し、現場検査を受ける手続きが求められます。
専門業者へ委託することでスムーズに進められた事例もあり、検査日程の調整負担を軽減できる場合があります。
設計図書の提出や現場検査を経て適切な免除を受け、法令を順守した安全管理をおこないましょう。

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スプリンクラーの種類

スプリンクラーの種類

建物の構造や気候に合った方式を選ぶことで、火災時の安全性が大きく向上します。
ここでは代表的な3方式を整理します。

主な3種類のスプリンクラー

閉鎖型は感熱体で各ヘッドが個別に開き、賃貸住宅で最も普及しています。
開放型は感知器や非常押しボタンの信号で全散水口から一斉放水し、大空間に対応できます。
放水型は高天井やアトリウム向けで、広範囲に水を行き渡らせる散水口を備えているタイプです。
各方式は放水量と作動時間が異なり、建築用途や天井高さ、内装材の燃焼性を総合評価して選定します。
作動温度区分や散水密度の違いも考慮することで、より安全性を高めることができます。

マンションで採用されるタイプ

共同住宅では湿式閉鎖型が主流で、感熱体が作動すると即放水し初期消火に有効です。
寒冷地では配管凍結を防ぐ乾式方式、電算室など水損を避けたい区画では予作動方式が導入されます。
乾式は空気充填のため放水開始までわずかに遅延しますが、供給ポンプと逆流防止弁を適切に設置すれば十分な効果を発揮します。
予作動方式では2重安全を確保する反面、煙感知器の誤報に備え定期校正が重要です。
管理組合が定期点検結果を掲示板に公開することで、入居者の防災意識を高める取り組みも広がっています。

種類ごとの特徴と使い分け

湿式は迅速に放水できる反面、配管腐食や寒冷対策が課題です。
乾式は凍結を防ぎますが、放水開始まで遅延が生じ、設置費用も高めです。
予作動式は誤放水を抑えられますが、設備が複雑で維持費がかさみます。
選定時は地域の気候や設備コスト、テナントの用途を総合的に比較し、最適な方式を導入することが肝要です。
さらに、負荷試験や換算散水密度のシミュレーションをおこなうことで、実火災に即した性能検証が可能になります。
今後はスプリンクラーと連携した自動通報システムの普及が進み、消防隊との情報共有がより迅速になると期待されています。

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まとめ

スプリンクラーは賃貸物件における火災対策として重要な設備であり、入居者の命と財産を守るうえで欠かせません。
設置基準を正しく理解して対応することで、法的リスクの回避や管理者としての信頼性向上にもつながります。
各種類の特性や対応範囲を把握しておくことで、物件ごとの構造に適した設備選定が可能になります。

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