プロパンガスの無償貸与契約とは?メリットやよくあるトラブルを解説

オーナー様向け

山本 裕之

筆者 山本 裕之

不動産キャリア20年

プロパンガスの無償貸与契約とは?メリットやよくあるトラブルを解説

プロパンガスの契約方法のひとつに「無償貸与契約」があります。
無償貸与契約を選んで問題ないのか、何かトラブルに見舞われるリスクはないのかなど、不安に思うこともあるでしょう。
そこで今回は、プロパンガスの無償貸与契約とは何か、契約するメリットやデメリット、よくあるトラブルの事例を解説します。

プロパンガスの無償貸与契約とは

プロパンガスの無償貸与契約とは

プロパンガスにおける無償貸与契約とは、プロパンガス会社とガスの供給契約を結ぶ代わりに、会社からガスコンロや給湯器などの住宅設備を無償で設置してもらうサービスです。
プロパンガスの無償貸与契約を結ぶには、プロパンガス会社を変更するか、契約するガスの種類を都市ガスからプロパンガスに切り替えるか、どちらかを選ぶことになります。

プロパンガス会社との無償貸与契約の仕組み

賃貸物件のオーナーがプロパンガスの供給会社と無償貸与契約を結ぶと、供給会社は業者価格で仕入れた住宅設備を対象の賃貸物件に設置します。
住宅設備の仕入れと設置にかかった費用は、オーナーではなく、プロパンガスの供給先である賃貸物件の借主から回収されます。
借主が負担するプロパンガスの料金に上乗せした形での回収となるため、賃貸物件のオーナーには無償貸与契約による費用負担は発生しません。
一方で、無償貸与契約を結ぶ賃貸物件の借主は、プロパンガスの使用料金だけでなく、住宅設備の仕入れや設置工事費も精算する必要があるのです。
あくまでも無償貸与契約はオーナーにとっては無償ですが、賃貸物件の借主からすれば住宅設備をリース契約して利用することと考えられるでしょう。
プロパンガス会社のなかには、無償貸与契約ではなく、設備貸与契約と名称を変えているケースもあります。

無償貸与契約の期間

無償貸与契約には、最低契約期間としてプロパンガス会社からガスの供給を受けなければならない期間が設定されています。
最低契約期間は、基本的に10~15年に設定されているケースが多く、1万円の無償貸与につき重量単価は約10円値上がりするのが一般的です。
無償貸与契約を結ぶと、最初のうちはプロパンガス会社から貸与されている住宅設備は会社の所有物として扱われますが、最低契約期間が満了を迎えればオーナーの所有物となります。

プロパンガスの無償貸与契約を選ぶメリットとデメリット

プロパンガスの無償貸与契約を選ぶメリットとデメリット

プロパン会社と無償貸与契約を結ぶかどうかは、メリットとデメリットを考慮し比較したうえで決めることが大切です。

プロパンガスの無償貸与契約を結ぶメリット

プロパンガス会社と無償貸与契約を結ぶメリットは、賃貸物件のオーナーも借主も初期費用を抑えられる点です。
ほかの契約方法とは異なり、無償貸与契約は住宅設備の仕入れと設置工事をプロパンガス会社に任せられます。
給湯器やガスコンロのほか、集合住宅であればエアコン・ウォシュレット・インターホンが無償貸与の対象設備に含まれるケースもあるでしょう。
住宅設備の購入費や設置工事にともなう費用が浮くと、本来かかるはずの初期費用を貯蓄に回したり、ほかの用途に充てたりなど、さまざまな使い方が可能です。
初期投資にかけられる予算が少ない方も、プロパンガスの無償貸与契約を結べば、オーナーとして賃貸経営の夢を実現しやすいでしょう。
また、初期費用を削減できる点は、賃貸物件のオーナーはもちろん、賃貸物件の借主にとっても大きなメリットといえます。
引っ越しには、敷金・礼金や引っ越し業者への支払いなど多額の費用がかかるため、少しでも初期費用を抑えられる点は借主へのアピールポイントになるでしょう。

プロパンガスの無償貸与契約を結ぶデメリット

メリットとは異なり、プロパンガス会社と無償貸与契約を結ぶデメリットは複数あります。
1つ目のデメリットとして挙げられるのが、容易にプロパンガス会社を変更できない点です。
無償貸与契約には、10~15年間の最低契約期間が設けられているケースが多く、期間中に解約すると違約金を請求されます。
請求額は契約期間の満了を迎えるまでの年数に応じて計算されるため、無償貸与契約を結んでから解約までの期間が短いほど支払う金額も高くなります。
2つ目のデメリットは、無償貸与契約の期間における値上げの可能性です。
賃貸物件のオーナーは、違約金の支払いを避けるため、最低契約期間を終えるまで契約し続けるのが一般的です。
その際、プロパンガス会社によっては、最低契約期間内に値上げがおこなわれるかもしれないことに注意しなくてはなりません。
プロパンガスの無償貸与契約は、初期費用を抑えられる代わりに、月々の負担が大きくなる可能性があることを理解しておくと良いでしょう。

プロパンガス会社との無償貸与契約でよくあるトラブル

プロパンガス会社との無償貸与契約でよくあるトラブル

プロパンガス会社と無償貸与契約を結ぶと、さまざまなトラブルが起こり得ます。
よくあるトラブルの事例と解決方法を理解したうえで無償貸与契約を結ぶかどうか決めましょう。

トラブル1.解約時に違約金を請求される

無償貸与契約に関するよくあるトラブルのひとつに、最低契約期間の最中にプロパンガス会社との契約を解除し、違約金を求められるケースがあります。
すでにデメリットとして解説しましたが、無償貸与契約は住宅設備の購入費や設置工事費の負担がない代わりに最低契約期間が設定されています。
契約期間が過ぎる前の解約を希望すると、違約金の支払いを求められるのです。
解約にともなう違約金トラブルを未然に防ぐためには、無償貸与契約の内容を事前に確認し、きちんと理解したうえで契約を結ぶことが大切です。
初期費用が浮くからという理由で安易に契約せず、違約金の有無や金額、月々のガス料金額などのポイントについて複数のプロパンガス会社を比較し、良いと思う会社と契約しましょう。

トラブル2.家賃の値下げを求められる

都市ガスと比較するとプロパンガスは料金が高い傾向にあり、賃貸物件の借主からクレームが入る、あるいは家賃の値下げ交渉をされるケースがあります。
賃貸物件の借主から家賃の値下げ交渉をされたら、オーナーは真摯かつ誠実に対応することを心がけましょう。
そのうえで、オーナーは借主に対し、プロパンガス会社と無償貸与契約を結ぶと月々のガス料金が値上げされることを説明してみてください。
賃貸借契約の更新料を0円にするなど、値上げ相当のサービスとして借主がよろこぶ特典を準備するのも良いでしょう。
なお、値上げされた金額の相当分を家賃から差し引く方法は、元の金額に戻すことが困難になりやすいため避けたほうが良いかもしれません。

トラブル3.減価償却の終了後も割引が適用されない

最低契約期間が終了してもプロパンガスの料金が変わらないケースは、無償貸与契約に関するトラブルとして比較的多い事例です。
住宅設備の導入にかかるコストは、最低契約期間中に減価償却されるのが原則で、期間を過ぎたあとの上乗せ分はプロパンガス会社が得る利益となります。
減価償却を終えてもプロパンガス料金の見直しがおこなわれないなら、適正価格でプロパンガスを利用できる別会社と契約を結びましょう。

まとめ

プロパンガス会社との無償貸与契約とは、住宅設備を無償貸与する代わりに契約期間を設定する仕組みです。
初期費用削減に効果的なメリットがある一方、中途解約で違約金が発生するなどのデメリットもあります。
減価償却が終了しても料金が変わらないなどのトラブルが生じたら、問題に適した解決策を講じてみてください。


”オーナー様向け”おすすめ記事

  • 敷地内の粗大ゴミ放置について!リスクや処分の責任も解説の画像

    敷地内の粗大ゴミ放置について!リスクや処分の責任も解説

    オーナー様向け

  • 契約書なしでも家賃の支払い義務はある?家賃滞納時の対応についても解説の画像

    契約書なしでも家賃の支払い義務はある?家賃滞納時の対応についても解説

    オーナー様向け

  • アパート名の変更は空室対策になる?変更の流れをご紹介の画像

    アパート名の変更は空室対策になる?変更の流れをご紹介

    オーナー様向け

  • 提携保証会社一覧の画像

    提携保証会社一覧

    オーナー様向け

  • 賃貸物件の設備はリースと購入のどちらが適切?メリット・デメリットも解説の画像

    賃貸物件の設備はリースと購入のどちらが適切?メリット・デメリットも解説

    オーナー様向け

  • 賃貸物件や駐車場の雪かきは誰がやる?捨て場やトラブル回避の対策も解説の画像

    賃貸物件や駐車場の雪かきは誰がやる?捨て場やトラブル回避の対策も解説

    オーナー様向け

もっと見る