賃貸経営の災害リスクへの備えとは?減災対策や保険なども解説
賃貸経営は家賃収入が入る、税金対策になるなど、管理者やオーナーには魅力的な資産活用方法でしょう。
しかし、メリットばかりを見るのではなく、リスクに関しても知っておかなければ、いずれ足元をすくわれる事態になるとも限りません。
そこで、賃貸経営で起こりうる災害リスクや備えとしての減災対策、また火災保険や地震保険への加入の重要性を解説していきます。
賃貸経営するうえで知っておきたいリスク
賃貸物件の経営は、家賃収入などのメリットがある一方で、いくつかのリスクを抱えなければいけません。
そのリスクには、おもに家賃の滞納リスク、空室リスク、そして自然災害リスクの3つがあります。
このうちの家賃の滞納と空室に関しては、管理会社や保証会社をとおせば、リスク回避ができるでしょう。
自然災害による建物への被害は責任を負わなくてはならない
自然災害はいつどこで、どのような規模で発生するか誰にもわからないため、回避するのは不可能です。
そして、もし自然災害によって建物に被害がでれば、民法の第606条に定められているように、修繕義務は賃貸人、つまりオーナーに発生します。
建物が被害を受け、入居者が住めない状態になれば、早急に修繕をおこない、住める状態に回復させなければいけないという義務を負うのです。
そして、その間の家賃に関して、入居者からの減額請求があれば、応じなければいけないケースもあります。
入居者が所有する家財は責任を負う必要はない
入居者が所有する家財に関しては、被害が出ても通常は持ち主である入居者自身の対応となります。
しかし、オーナー側に過失があり、それにより被害が発生した場合は、修繕義務違反などの過失にあたるため、この点は細心の注意が必要です。
たとえば、屋根に修繕箇所があるのを知っておきながらオーナーが放置し、大雨での雨漏りが原因で入居者の家財に被害がでれば、賠償責任を問われる可能性があります。
一方、台風といった被害が予測されるケースで、入居者が雨戸や窓を故意に閉めなかったなどの場合、生じた被害に関しては修繕義務や賠償責任を負う必要はないでしょう。
また、ベランダに鉢植えなどの倒れやすいものを放置し、風であおられて窓ガラスが割れたり、けが人がでた場合なども入居者の責任となるのが一般的な解釈です。
入居者の生活保証にまで責任を負う必要はない
オーナーは、入居者に対し、そこで安全に暮らせる部屋を貸す責任はありますが、入居者の生活保証にまで責任を負う必要はありません。
入居者に過失があるケースでは、部屋に住めない状態だからと修繕期間中のホテル代の負担を求められても、それには応じなくてもいいのです。
このように自然災害のリスクには、オーナー側に責任があるケースと、入居者が責任を負うケースとがあり、その判断が難しくトラブルとなる場合も少なくありません。
賃貸経営での自然災害への備えは減災が重要
自然災害を避けるのは不可能であっても、災害への備えを心がけていれば減災は可能です。
減災のポイント①土地の危険度を把握する
減災のポイントとしてはまず、その土地の危険度を把握するのが重要で、所有する賃貸物件がどういった立地にあるのか、オーナーとして知っておく必要があります。
水害などの自然災害が発生したとき、どういった事態が想定されるのか、どこへ避難すればいいのか、オーナーはもちろん入居者も知っておかなければいけません。
そこで役立つのがハザードマップで、これはとくに水害による被害を軽減するために作られたものです。
ハザードマップには被災が想定される区域やその危険度、また最寄りの避難場所や避難経路などが記されており、区市町村ごとに配布されています。
自然災害には、河川の氾濫による洪水や大雨による土砂災害、地震や津波などがあり、ハザードマップもそれらの災害の種類別で確認する必要があります。
もし、手元にハザードマップがなければ、管轄の役所で入手するかインターネットで検索すれば、いくつかのサイトが表示されるので、そちらで確認するといいでしょう。
減災のポイント②入居者への災害に関する意識づけ
次の備えとしては、入居者への災害に関する意識づけがあり、日頃から災害へ関心を持ってもらうようオーナーとしての働きかけが必要です。
たとえば、ハザードマップを各部屋に配ったり、掲示板に張り出しておくなどする方法があります。
また、防災グッズの配備や、避難しやすいよう常に共用部や避難路を整理しておくのも忘れずにおこないたいものです。
そして、入居者の安否が確認できるよう、連絡先の交換や日頃のちょっとした挨拶など、コミュニティーとして、お互いを助け合える環境づくりも重要でしょう。
減災のポイント③物件の修繕
減災に直接つながる対策の1つには、物件の修繕も含まれており、とくに屋根や外壁など風雨にさらされる箇所は定期的な点検と問題があった場合の修繕は不可欠です。
賃貸物件など集合住宅での防災対策で参考としたいのが防災マンションで、さまざまな取り組みがなされています。
具体的な例としては、災害時の電力や水の供給網、トイレの確保、家具の転倒防止への対策や閉じ込めを回避する引き戸採用などがあり、可能な部分が取り入れたいものです。
賃貸経営の災害への備えには保険の加入が重要
アパートローンを利用するときは、基本的に火災保険への加入が義務となっており、ほとんどの物件が対象となっています。
火災保険がカバーできる損害
火災保険がカバーできる損害には、火災の他にも水害や落雷、大雪などがあり、特約をつけて補償範囲を広げるのも可能です。
ただし、一般的に賃貸経営での火災保険の補償対象は浴槽やトイレなどの設備を含む建物全体のみであり、入居者の個人的な家財は含まれません。
そのため、入居者の家財を対象にした火災保険に関しては、入居者自身で加入してもらいましょう。
ただし、加入を任意にしていると災害が発生し、入居者の家財に被害がでた場合、その補償に関してトラブルとなるケースも少なくはありません。
こうしたトラブルを避けるには、入居の条件として、契約時に家財保険への加入を義務付けするとよいでしょう。
このように、火災や水害に対しての補償は火災保険で賄えますが、じつは地震による被害に関しては、火災保険の対象ではありません。
地震保険がカバーできる損害
日本は地震の多い国で、近年は大型地震も頻発しており、オーナーも地震に対して備えておく必要があります。
地震保険は、単独での加入はできず、火災保険に付帯となっているためセットでの加入となります。
損害保険料率算出機構のデータでは、地震保険への付帯率は2023年の時点で69.7%で、数値で判断すると伸び悩んでいる状態です。
地震保険は入居者の生活再建が目的となっており、建物に対してのものではないため、オーナーにとって加入をためらう原因となるのでしょう。
現在の建築物は耐震基準があがっているため、建築基準法で最低限の耐震等級である1であっても、震度6~7の地震は耐えられるようにできています。
ただし、これは地震が起きても被害が出ないという意味ではなく、建物の倒壊や崩壊のリスクがほぼない意味合いである点には注意が必要です。
地震が起こって建物に被害が出た場合、地震保険はどこまで補償されるのかをみていきます。
まず、全損の場合は保険金額は全額補償され、大半損・小半損・一部損と被害が小さくなるにつれ、保険金額の割合も60%・30%・5%と少なくなります。
さらに、地震保険金額は火災保険金額の範囲の30~50%と決められており、地震保険金額だけで、建物の再建は難しいといわざるを得ません。
まとめ
賃貸経営のリスクで避けられないのが自然災害による被害で、被害が出た場合はオーナーに修繕義務が発生します。
台風や大雨などから建物や入居者を守るには、減災の意識は必須で、ハザードマップの確認や防災グッズの配備が重要です。
また、地震への備えとして、火災保険とセットで地震保険への加入も考えておくべきでしょう。