孤独死でも賃貸借契約は解約されない?発生時の対応とリスク対策を解説

オーナー様向け

孤独死でも賃貸借契約は解約されない?発生時の対応とリスク対策を解説

賃貸物件で入居者の孤独死が発生したら、大家さんはどのように対応する必要があるのでしょうか。
少子高齢化や核家族化が進むと同時に、単身者の入居が増えているため、大家さんとしてはさまざまなリスクへの対策が必要です。
こちらの記事では、入居者が孤独死したときの賃貸借契約の対応とリスク対策について解説します。

入居者が孤独死したときの賃貸借契約はどうなるのか

入居者が孤独死したときの賃貸借契約はどうなるのか

大家さんとしては、入居者が死亡すると家賃収入が止まってしまう可能性があるので、できるだけ早く次の入居者を見つけたいと考えるのが当然です。
しかし、入居者が死亡したからといってただちに貸主と借主の関係性を抹消できるわけではありません。
ここでは、孤独死の実態と賃貸借契約をすぐに解約できない理由、相続人への連絡事項について解説します。

孤独死の実態

少子高齢化や核家族化などさまざまな背景を理由に、日本国内での孤独死は増加傾向にあります。
内閣府「高齢社会白書」のデータでは、東京23区内で65歳以上の単身者の自宅における死亡者数は2,733人(2012年)から4,868人(2022年)まで増加しています。
さらに、警察庁「自宅で死亡した一人暮らしの数(2024年1月から3月)」のデータでは、死亡者数21,716人に対して14.5%は60歳未満でした。
これらのデータによって自宅で死亡する方は必ずしも高齢者とは限らないとわかるため、大家さんは常に入居者の死亡に対する対策を把握しておく必要があります。

賃貸借契約を直ちに解約できない理由

民法では、賃貸物件の契約者が死亡すると賃借権(家賃を払う代わりに物件を借りる権利)が相続対象になると定められています。
原則として賃貸借契約は、一身専属権に該当しないため、民法896条に基づいて相続開始とともに相続人に権利が渡ります。
ごく稀に一身専属権が設定されているケースもありますが、その場合に限っては入居者の死亡と同時に解約可能です。

相続人への連絡事項

入居者が死亡すると賃借権が相続されてしまうので、大家さんはすぐに相続人の有無を確認して、相続人に連絡する必要があります。
賃借権が相続されるとはいえ、ほとんどの相続人は該当物件の家賃を払って住む理由がないため、継続を希望しないケースが大半です。
賃借権を抹消するためには、残置物処理や賃貸借契約の解除手続きなどをおこなう必要があるので、協力してもらいましょう。
入居者が契約時に提出している保証人や緊急連絡先などの情報から相続人を辿るほか、孤独死であれば警察が遺体を回収するため、警察から親族の連絡先を聞ける可能性もあります。

孤独死が発生した賃貸借契約の対応方法

孤独死が発生した賃貸借契約の対応方法

孤独死が発生したら貸借権は相続の対象になるため、貸主の一存で契約解除できません。
まずは相続人を探して賃借権を相続するのか、相続しないのであれば次の入居者を見つけるための解約手続きと準備に進みます。
ここでは、孤独死が発生した賃貸借契約の対応方法を手順に則り解説します。

残置物処理

入居者が亡くなった場合、家具・家電・家財道具などの残置物をすべて撤去しなければ次の入居者探しができません。
残置物のなかには相続財産に該当するものが含まれている可能性があるため、大家さんが勝手に処分すると相続トラブルに発展する恐れがあります。
そのため、必ず相続人を見つけて、相続人に処分してもらったのちに部屋を明け渡してもらいましょう。

原状回復と費用請求

亡くなった入居者の相続人は、残置物処理のほかにも物件の原状回復を代理でおこなう義務が課せられています。
とくに死亡してから数日経ってから発見された場合、フローリングや壁などに体液や血液などが付着して染み付いているケースも多いです。
通常のクリーニングできれいにならないのであれば、遺体の腐敗・腐乱が原因で発生したダメージを原状回復するための特殊清掃への依頼が必要です。
できるだけ早く特殊清掃のみ済ませたい場合、大家さんが独自にクリーニング会社に依頼できるため、後から相続人に請求しましょう。

賃貸借契約の解約

物件の原状回復が完了したら賃貸借契約の解約手続きへと進みます。
相続人が見つかるまでに時間がかかってしまい未収家賃があれば、解約手続きをおこなう前までに請求してください。
解約手続きでは、書類の作成や敷金残高があれば相続人に対して変換します。

死亡原因の把握

新しい入居者を探すにあたって、部屋で人が亡くなった事実を告知する義務があるので、相続人や親族から死亡の原因や状態を確認します。
とくに殺人や自殺は「判断に重要な影響を及ぼす事項」に該当するため、入居希望者には必ず事情を説明しなければなりません。
病死・突然死・衰弱死など自然死に関しては、一定期間を過ぎると告知義務は無くなるものの、発見が遅くなったり悪臭・損傷がひどい場合は告知が必要です。

損害賠償請求

死亡原因が理由で新しい入居者が見つからずに家賃収入が途絶えたり、家賃の値下げをせざるおえない状態になったりした場合、相続人に対して損害賠償請求ができます。
ただし、亡くなった入居者に過失がなければ避けようがなかった事態のため、損害賠償請求が認められるとは限りません。
どうしても収益に影響がでていて納得いかないのであれば、管理会社や弁護士に相談してみましょう。

孤独死のリスク対策

孤独死のリスク対策

入居者が孤独死すると発見が遅くなって部屋の状態が悪くなったり、次の入居者が見つかりにくくなったり多くのデメリットが生じます。
亡くなったと同時に賃貸借契約を解約できるわけではないので、万が一のリスクに対する備えが必要です。
ここでは、孤独死によるリスクを回避する方法について解説します。

身元引受人及び緊急連絡先の確保

賃貸借契約を締結するときに、あらかじめ入居者の身元引受人および緊急連絡先を確認しておけば、すぐに連絡が取れるのでその後の手続きがスムーズに進みます。
残置物の処分、原状回復のクリーニング依頼と費用の支払いなど、相続人と連絡がつけばどのように対処するか話し合いができます。
何十年も長期的に住んでいる場合、身元引受人や緊急連絡先の情報が変わっている可能性もあるので、契約更新のたびに確認しておくと安心です。

孤独死保険の加入

単身の一人暮らしによる自殺や自然死などの事例が増えている背景を理由に、孤独死に対する保険プランを用意する保険会社が増えています。
大家さんや管理会社が加入する家主型、入居者が加入する入居者型の2種類があり、家主型には遺品整理費・原状回復費・家賃損失などを補償してくれます。
ランニングコストが発生するのはデメリットですが、万が一に備えて加入を検討してみてもよいでしょう。

連帯保証人の制限

賃貸借契約をするとき、連帯保証人は相続人もしくは親族に限定する方法があります。
全く関係ない第三者が連帯保証人になっていても残置物処理や契約抹消の手続きができないため、結局は大家さんが相続人を探さなければなりません。
必ずしも相続人が連帯保証人になれるとは限らないため、入居者と相談しながら決める必要があります。

終身建物賃貸借契約

通常であれば賃借権は相続対象になりますが、終身建物賃貸借契約を締結すれば契約者のみに賃借権が帰属されて相続対象になりません。
終身建物賃貸借契約を利用できるのは、大家さんが都道府県知事から認可を受け、入居者が60歳以上である場合に限ります。
制限はあるものの、スムーズな手続きを進めるための方法として活用してみてもよいでしょう。

まとめ

賃貸物件で孤独死が発生すると賃借権が相続されるので、相続人を探して契約解除もしくは入居者の変更が必要になります。
残置物は、相続財産に含まれるため大家さんの一存では処分できません。
家賃収益を止めないためにも、孤独死の発生リスクに備えてどのような対応ができるのか考えておきましょう。


”オーナー様向け”おすすめ記事

  • 敷地内の粗大ゴミ放置について!リスクや処分の責任も解説の画像

    敷地内の粗大ゴミ放置について!リスクや処分の責任も解説

    オーナー様向け

  • 契約書なしでも家賃の支払い義務はある?家賃滞納時の対応についても解説の画像

    契約書なしでも家賃の支払い義務はある?家賃滞納時の対応についても解説

    オーナー様向け

  • アパート名の変更は空室対策になる?変更の流れをご紹介の画像

    アパート名の変更は空室対策になる?変更の流れをご紹介

    オーナー様向け

  • 提携保証会社一覧の画像

    提携保証会社一覧

    オーナー様向け

  • 賃貸物件の設備はリースと購入のどちらが適切?メリット・デメリットも解説の画像

    賃貸物件の設備はリースと購入のどちらが適切?メリット・デメリットも解説

    オーナー様向け

  • 賃貸物件や駐車場の雪かきは誰がやる?捨て場やトラブル回避の対策も解説の画像

    賃貸物件や駐車場の雪かきは誰がやる?捨て場やトラブル回避の対策も解説

    オーナー様向け

もっと見る