賃貸物件の管理における契約更新料とは?相場や注意点を解説

入居者様向け

中村 亮太

筆者 中村 亮太

不動産キャリア5年

賃貸物件の管理における契約更新料とは?相場や注意点を解説

賃貸物件の管理には物件そのものの管理だけでなく、さまざまな契約上の手続きも生じます。
そのひとつが契約の更新ですが、更新料の支払いをめぐるトラブルが発生しやすい手続きです。
そこで今回は、賃貸物件の管理における契約更新料とはなにか、相場や注意点について解説します。

賃貸物件の管理における契約更新料とはなにか

賃貸物件の管理における契約更新料とはなにか

賃貸物件を管理する場合、契約期間と更新についてよく把握しておく必要があります。
ここでは、賃貸物件の契約更新とはなにか、更新の主な流れ、更新料の支払いを拒否された場合に分けて解説します。

賃貸物件の契約更新とは?

貸主と借主の間で締結する賃貸借契約には、期限が決められていることが一般的です。
借主は期間が満了する前に住み続けるか退去するかを選択する必要があります。
賃貸物件の多くでは「普通借家契約」を締結しており、正当な事由がない限り、貸主は更新を拒否できません。
一方で、貸主がある一定期間だけ貸したい場合に「定期借家契約」を結ぶケースもあります。
定期借家契約では、契約満了後は借主側の希望による更新はできません。

賃貸借契約の更新の流れ

契約更新は、契約期間満了の1~3か月前に、貸主や不動産会社から借主に対して通知をおこないます。
借主が更新を希望する場合は、期日までに更新契約書の記入、署名捺印をします。
同時に更新料と手数料を振り込み、更新手続きは完了です。
なお、期日までに借主から更新の意思が伝えられなくても、普通借家契約の場合は「法定更新」の扱いになります。
法定更新では、以前と同条件で契約更新されたとみなされ、借主には家賃支払いの義務が生じます。

更新料の支払いを拒否された場合

賃貸借物件の更新時には借主が更新料を支払うのが一般的ですが、支払いを拒否されるケースがあります。
更新料は賃貸借契約書に明記されていない限り、借主の支払い義務は発生しません。
そのため、当初の契約時に、契約書に「更新には更新料が必要である」旨と設定料金を明記しておくことが大切です。
とくに借主からの通知がなく法的更新になった場合には、その後の契約は期間の定めのない契約になるため、更新料の支払いは必要がないと主張する方がいます。
法定更新後の更新料については、実際の裁判例で更新料の発生を認めたケースと認めなかったケースの両方があります。
このようなトラブルを避けるために、賃貸借契約書には法定更新の場合にも更新料が発生する旨も記載しておくのがおすすめです。

賃貸借契約の更新料の相場

賃貸借契約の更新料の相場

賃貸物件の貸主のなかには、一般的な賃貸物件の契約管理について気になる方もいるでしょう。
ここでは、更新料の相場や更新料の用途、更新料以外にかかる費用に分けて解説します。

更新料の相場

更新料には法律で定められた金額がないため、貸主の判断で金額を決められます。
一般的な相場は、家賃の1か月分から2か月分です。
更新料の相場には地域差もあり、関東では長年の慣習として更新料を取る割合が高いです。
一方で、関西では更新料を徴収しない貸主も多く見られます。
家賃の半月分など、他地域よりも相場が安めな地域もあります。

更新料の用途

更新料の主な目的は、貸主の収入補填や物件の修繕費、管理費などです。
更新料を徴収しない地域では、敷金や礼金が高めに設定されているケースもあります。
また、管理会社が物件を管理している場合は、更新料に管理会社の取り分が含まれるでしょう。
借主との更新手続きは管理会社が代行し、手続き費用などを差し引いた額が貸主に振り込まれます。
貸主と管理会社との間の更新料の取り分は1対1が相場です。

更新料以外にかかる費用

賃貸物件の更新時には、更新料以外にも借主が支払う費用があります。
賃貸借契約の満了に伴い、火災保険の期限も切れる場合には、再契約と保険料の支払いが必要です。
借主が家賃保証会社を利用している場合は、保証会社への保証料も支払う必要があります。
契約期間中に滞納履歴がなければ、入居時よりも保証料が安くなるケースが多いです。
管理会社が管理している物件の場合、更新料のなかから管理会社が取り分を取ります。
一方で、契約や管理方式によっては借主が貸主に支払う更新料と、管理会社に対して支払う更新手数料を別口請求にするケースもあります。
貸主も、更新時に借主が支払う費用の項目を把握しておくと、トラブル発生時に対処しやすくなるでしょう。

賃貸借契約の更新料の注意点

賃貸借契約の更新料の注意点

賃貸借契約の更新時には「更新料を支払いたくない」と考える借主との間でトラブルが起こる可能性があります。
ここでは、トラブルを避けるための注意点を解説します。

注意点①更新料をゼロにしない

更新時に借主から更新料の支払いを拒否されたり、値下げを要求されたりするケースがあるかもしれません。
しかし、更新料をゼロにすることはおすすめできません。
管理会社に委託している場合、借主に請求する更新料の有無に関わらず更新手数料は発生します。
更新料を徴収する場合はそのなかから管理会社へ手数料の支払いができますが、徴収しない場合、手数料は貸主の負担となります。
借主に長く入居してもらうために更新料をゼロにする選択肢をする貸主もいるでしょう。
その場合は、貸主持ちになる費用と比較し、利益率を検討することが大切です。

注意点②賃貸借契約書の内容をよく検討する

更新料は法的に定められている取り決めではないため、契約書に明記されていない限り徴収できません。
そのため、借主と賃貸借契約を結ぶ時点で契約内容をよく検討することは大切です。
更新料を徴収する場合は「契約更新時、借主は更新料として家賃の1か月分を支払う」などの文言を含めておく必要があります。
更新料の金額や法定更新の場合何年ごとの徴収にするかなど、できるだけ具体的に記載しておくことが大切です。

注意点③更新手続きが遅れないように注意する

管理会社に委託せず、自主管理している貸主の場合、うっかり契約期間を過ぎてしまうケースもあるかもしれません。
契約更新の通知や新契約の締結をおこなわなくても、借主から退去の申し出がない限り契約は自動更新されます。
この場合「法的更新」とみなされ、期間の定めがない契約になる点に注意が必要です。
法的更新では、次回以降の更新料や借主が即日退去を希望した場合の家賃の扱いについて、トラブルが起こる可能性があります。
また、火災保険の契約が満了になっていると、期日後の損害について保障されなくなるリスクもあります。
各戸の借主の契約日を把握し、更新通知を遅れずにおこなうことは大切です。

注意点④家賃の値上げについて

更新のタイミングで家賃の値上げを図るケースがあるでしょう。
家賃の値上げについては、借地借家法により、以下のいずれかの条件に当てはまる場合のみ可能とされています。

●土地や建物の租税などの影響で現在の家賃が不当な場合
●土地や建物価格などの経済状況の変化で現在の家賃が不当な場合
●周辺の類似物件に比べて家賃が不当である


家賃の値上げは、借主が更新を承諾せず法定更新に持ち込んだ場合、状況が複雑化するリスクがあります。
そのため、無理な値上げは避け、借主から同意を得やすい妥当な価格で交渉することが理想的です。

まとめ

賃貸物件の管理における契約更新料とは、契約期限を決めて締結した普通借家契約の更新時に借主が貸主に支払うものです。
更新料の相場は家賃の1か月~2か月分ですが地域差があり、更新料を徴収しない地域もあります。
更新料は賃貸借契約書に明記していない限り徴収できないため、契約書の内容をよく確認するようにしましょう。


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