賃貸経営での生活保護受給者の入居受け入れについて!審査ポイントも解説
賃貸経営をする際、生活保護受給者の入居を受け入れるかどうかは慎重に判断しなければなりません。
住宅扶助による家賃支払いの仕組みや、入居審査のポイントも正しく理解することが大切です。
さらに、入居後に発生する可能性のあるトラブルと、その適切な対策についても知っておく必要があるでしょう。
そこでこの記事では、生活保護受給者の入居を受け入れる際に押さえておくべきポイントを解説します。
賃貸経営をしているオーナー様は、ぜひこの記事をご参考になさってください。
生活保護受給者の家賃は住宅扶助でまかなわれることについて
生活保護受給者の方々が、安心して生活を送るためには、安定した住まいの確保が不可欠です。
生活保護制度には家賃を支援する住宅扶助があり、地域や世帯人数によって上限額が設定されています。
東京都の単身者の場合、住宅扶助は上限が53,700円となっており、これを超える家賃の物件は原則認められません。
また、東京都では生活扶助として76,310円が支給されるケースもあり、住宅扶助と合わせると一人当たりの支給額は大きくなります。
ただし、支給される金額が多くても、その分を正しく家賃に充てなければ滞納のリスクが生じるため注意が必要です。
住宅扶助は家賃を直接支援する制度で、家賃補助とは異なります。
そのため、受給者は支給された住宅扶助を家賃に充てる義務がありますが、他の出費に回してしまうと滞納につながるおそれがあります。
家主としては、住宅扶助の仕組みを理解し、物件の家賃が上限を超えないように配慮することが重要です。
以下では、家賃の代理納付制度やその申請手続きについて解説します。
住宅扶助とは
住宅扶助は、生活保護受給者が安定して生活できるように、家賃や共益費などを一定範囲で支援する制度です。
世帯構成や地域によって支給額の上限が異なるため、引っ越しの際には各自治体の基準を確認することが求められます。
家主としても、物件の家賃が上限を大幅に超えないかどうかを把握しておくと、入居後のトラブルを防ぐことにつながります。
家賃の代理納付
家賃の代理納付とは、自治体が受給者に代わって家主へ家賃を直接支払う制度です。
家賃滞納を防ぎ、受給者の安定した住環境を維持する目的があります。
自治体によっては、管理費や共益費も代理納付の対象となる場合がありますが、必ずしもすべてが対象になるわけではありません。
この制度を利用することで、家賃が確実に支払われるため、家主は滞納リスクを軽減できます。
受給者も家賃を支払う手間が減り、家主との信頼関係を保ちやすくなります。
代理納付の申請手続き
代理納付を希望する場合、まずは担当のケースワーカーに相談し、代理納付申込書などの必要書類を提出します。
自治体によっては、口座振替の導入状況や家主の希望を確認するため、追加の手続きが必要になるケースもあります。
また、申請が受理されるまでには時間がかかることがあり、初月の家賃支払いに間に合わない場合もあるため注意が必要です。
家賃の滞納がすでに発生している場合や、家主が代理納付を強く希望している場合は、自治体から代理納付を推奨されることもあります。
詳細は、各自治体の福祉事務所で確認するようにしましょう。
生活保護受給者の入居審査をおこなうときのポイント
生活保護受給者が賃貸物件への入居を希望する際、家主や不動産管理者は一般の入居審査とは異なる視点で確認する必要があります。
以下では、健康状態、連帯保証人の有無、生活保護受給の理由について解説します。
健康状態の確認
病気や障がいがある方、高齢の方など、生活保護を受給している方の健康状態はさまざまです。
入居審査では、通院や介護サービスの利用が必要かどうかを確かめることで、物件の立地や設備が適切か判断します。
とくに高齢者の場合は、孤独死のリスクや緊急時の対応体制を整えることが求められます。
家主としては、近隣住民の協力体制や地域の見守りサービスなどを活用して、安全に暮らせる環境づくりを検討するとよいでしょう。
連帯保証人の有無
家賃滞納リスクを抑えるため、連帯保証人の有無は重要な審査項目です。
ただし、生活保護受給者は親族との関係が希薄であったり、高齢のために保証人を立てられないこともあります。
このような場合、保証会社を利用することで家賃支払いを保証してもらう方法がありますが、保証会社の審査も厳格なため、過去の家賃滞納歴や信用情報によっては審査に通らないこともあります。
家主としては、保証会社の利用に加えて家賃の代理納付制度を組み合わせるなど、複数の手段を検討することが望ましいです。
生活保護受給の理由の確認
入居希望者が、生活保護を受給する理由は多岐にわたります。
リストラや倒産などで一時的に収入が途絶えた場合は再就職の可能性があり、将来的に家賃支払い能力が回復する見込みがあります。
一方、障がいや長期的な疾病などで受給している場合は、安定した収入を得ることが難しい場合があり、住宅扶助の継続性を見極める必要があるでしょう。
家主としては、入居者が継続的に家賃を支払えるよう、住宅扶助の申請状況や代理納付の利用意向などを事前に確認することを心がけなければなりません。
生活保護受給者の入居でよくあるトラブルと対策について
生活保護受給者が入居する際には、家主や不動産管理者が直面しやすいトラブルがあります。
ここでは、家賃滞納、近隣トラブル、孤独死の三つについて、その対策と併せて解説します。
家賃滞納
生活保護受給者であっても、何らかの理由で家賃を他に流用してしまい、滞納につながるケースがあります。
とくに、住宅扶助と生活扶助を混同してしまうことがあるため、家賃の支払いを優先する意識づけが必要です。
こうしたリスクを軽減するには、家主が代理納付制度や保証会社の利用を積極的に勧めることが効果的でしょう。
また、受給者とのコミュニケーションを密にし、支払いに問題が生じた場合は早めにケースワーカーと連携して対応することが大切です。
近隣トラブル
精神的な疾患や、依存症などを抱える受給者の場合、騒音や不適切な行動などで近隣住民とのトラブルを引き起こすことがあります。
家主としては、まず受給者本人と話し合い、トラブルの原因を把握することが大切です。
それでも改善が見られない場合は、ケースワーカーや福祉事務所に相談することで、専門的なサポートを受けられる可能性があります。
近隣住民との良好な関係を保つためにも、問題が深刻化する前に早期の対処を心がけましょう。
孤独死
高齢の生活保護受給者が一人暮らしをする場合、孤独死のリスクが高まります。
万一孤独死が発生すると、家主や管理会社は遺品整理や特殊清掃などの費用を含め、多大な負担を負うことになりかねません。
そのため、定期的な見守りサービスの導入や、緊急連絡先の確保が大切だといえるでえしょう。
地域によっては、行政やNPO法人が見守り活動をおこなっている場合もあるので、事前に情報を収集し、入居者とともに活用を検討するのが望ましいです。
まとめ
生活保護受給者の家賃は住宅扶助で支払われるため、代理納付などの制度を理解することが重要です。
入居審査では保証人の有無や健康状態を確認し、適切な判断基準を設ける必要があります。
家賃滞納や近隣トラブルを防ぐために、契約前の対策を徹底し、リスクを最小限に抑えましょう。