賃貸経営における資産管理法人とは?メリットやデメリットを解説!

賃貸経営における資産管理法人とは?メリットやデメリットを解説!

賃貸経営をおこなうにあたって注目を集めているのが「資産管理法人」の存在です。
しかし、資産管理法人とはそもそもどのような会社なのか、設立するとどのような利点を得られるのかなどがわからない方も多いでしょう。
そこで今回は、賃貸経営における資産管理法人とは何かについて、設立するメリット・デメリットとあわせて解説します。

賃貸経営における資産管理法人とはどのような会社か?

賃貸経営における資産管理法人とはどのような会社か?

資産管理法人とは、不動産賃貸業や資産運用を効率的に管理・運営するために設立される法人です。
ここでは、資産管理法人の概要について解説します。

資産管理法人の設立方法とは?

資産管理法人の設立には、一般的な法人設立と同様に資本金が必要です。
ただし、日本国内で資産管理法人を設立する際の最低資本金は1円であり、比較的簡単に始めることができます。
資産管理法人を設立するには、まず法人名、目的、所在地、出資者、資本金の額、決算月を決定します。
次に、法人の基本ルールである定款を作成し、登記書類を法務局に提出するとともに、開業届を税務署に提出する必要があるでしょう。
また、法人用の銀行口座を開設し、資本金を入金した後、通帳の写しを法務局に提出しなければなりません。

資産管理法人ができることとは?

資産管理法人が担う役割は、賃貸経営における物件や収益などの資産の管理です。
賃貸経営をおこなうオーナー自身の資産を管理する業務を担うことから、プライベートカンパニーとも呼ばれます。
資産管理法人を設立すると、個人と入居者間のやり取りは資産管理法人を経由する形に変わるでしょう。
これまで直接入居者から振り込まれていた家賃は、資産管理法人を通じてオーナーに役員報酬として配分される形になります。
資産管理法人の多くは、合同会社や株式会社など一般的な会社と同様の形態を取りますが、オーナーのための会社であり、資産管理以外の業務はおこなわない点が特徴です。

賃貸経営における資産管理法人設立のメリット

賃貸経営における資産管理法人設立のメリット

資産管理法人を立ち上げると、個人で賃貸経営をおこなうときとは違い、どのようなメリットがあるのかが気になる方もいるでしょう。
ここでは、賃貸経営において資産管理法人を設立するメリットについて解説します。

節税効果が期待できる

資産管理法人を設立するメリットの一つは、節税効果が期待できる点です。
個人として賃貸収入を得ると、所得金額に応じて15~55%の税率が課されます。
所得が増えるほど税率が高くなるため、賃貸経営の規模が大きくなると、納税額の負担が大きくなる可能性があるでしょう。
しかし、資本金が1億円以下の資産管理法人では、800万円を超える所得に対して一律約33%の税率が課されます。
個人と資産管理法人では税率が20%以上異なるため、法人で賃貸経営をおこなうことで、節税効果が大きく期待できます。

所得の分散が可能

賃貸経営において発生する所得を分散できる点は、資産管理法人を設立するメリットです。
たとえば、資産管理法人において家族を従業員として設定し給与を支払うことで、法人が得た所得を分散でき、所得税の節税が期待できます。
さらに、家族に支払った給与は経費として計上できるため、資産管理法人の課税対象所得を減少させることが可能です。
ただし、家族が実際におこなう業務に対する給与額が妥当でない場合、その給与は経費として認められないことがあるため、注意が必要です。

相続税対策が可能

資産管理法人を設立するメリットとして、相続税対策が可能である点が挙げられます。
個人として家族に生前贈与する場合、非課税枠は年間110万円です。
これを超える金額を生前贈与すると、受け取った側が贈与税を納めなければなりません。
しかし、資産管理法人を通じて給与として家族にお金を渡すと、贈与税よりも低い税率の所得税として資産を整理できるため、税負担を軽減できます。
また、資産管理法人を設立して賃貸経営をおこなうと、資産や収益は法人の財産となります。
資産管理法人を設立した方が亡くなった際、残された家族が法人の財産を受け継いでも相続税は課税されないため、相続税対策としても有効です。

さまざまなお金を経費として計上できる

資産管理法人を設立すれば、個人で賃貸経営をおこなうよりも計上できる経費が増えます。
たとえば、資産管理法人で役員であるオーナーの生命保険を契約した場合、保険料の支払い額をそのまま経費として計上できます。
一方、個人の場合、最大12万円までしか所得から控除できません。
また、資産管理法人が役員の住まいを法人名義で借りると、家賃の一定割合を経費として計上できます。
さらに、従業員に支払う退職金や、賃貸経営を行っている物件への移動にかかる交通費も経費として計上可能です。

賃貸経営における資産管理法人設立のデメリット

賃貸経営における資産管理法人設立のデメリット

資産管理法人の設立には数多くのメリットがある一方でデメリットもあります。
のちのトラブルを防ぐためにも、資産管理法人を立ち上げるときにはメリットだけでなくデメリットも踏まえて慎重に検討することが大切です。
ここでは、賃貸経営において資産管理法人を設立するデメリットについて解説します。

法人設立時のコストがかかる

資産管理法人を立ち上げるには、法人登記の登録免許税や定款の認証手数料、謄本手数料、定款にかかる収入印紙代、登記手続きの代行を依頼した司法書士への報酬などが必要です。
資産管理法人を設立する場合、合同会社では約15万円、株式会社では約30万円の費用がかかる点はデメリットです。
また、資本金の金額を1円に設定できるものの、数十万円の費用が必要となることも考慮しておく必要があります。

法人としての維持費がかかる

資産管理法人の設立後は、維持するために労力とコストが発生します。
具体的には、法人税の申告や決算報告など、定期的な税務手続きが必要です。
これらの手続きには専門的な知識が求められるため、公認会計士や税理士に依頼するのが一般的です。
しかし、数十万円の報酬が発生する点はデメリットといわざるを得ません。
また、法人住民税の均等割額として、毎年最低7万円の支払いが必要である点もデメリットです。

資産をオーナーに移すときのコストがかかる

資産管理法人を立ち上げると、賃貸経営で得られる収益は会社の財産となります。
そのため、オーナーが自由にお金を使えなくなる点はデメリットです。
もし、資産管理法人からオーナーへお金を移す場合、役員報酬や配当の形を取りますが、最大で約55%の税率が課される可能性があるため、注意が必要です。

売却時に優遇税率が適用されない

賃貸経営を成功させるためには、出口戦略として物件売却が重要です。
個人で賃貸物件を売却する場合、所有期間が5年を超えていれば、譲渡所得に課される税率は20.315%と優遇されます。
しかし、法人ではこの優遇税率が適用されず、所有期間が5年を超えていても譲渡所得に課される税率は一律39.63%です。
そのため、賃貸物件を売却して大きな利益が発生した場合、法人の場合は個人よりも多額の税金を納めなければならないことがあります。

まとめ

賃貸経営における資産管理法人とは、個人が資産を管理する目的で立ち上げる会社です。
賃貸経営をおこなうにあたって、資産管理法人を立ち上げると所得税の節税効果が期待できたり、相続対策を講じられたりといったメリットがあります。
しかし、設立時のコストや維持費がかかる、売却時に優遇税率が適用されないなどのデメリットもあるため、注意が必要です。